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Interview

ma-rima-ruさんが「クジラの形をした、現状と希望を背負った生き物」に込めた環境への思いと、ECOPET®️を素材に選んだ理由

海と山に挟まれた街、鎌倉を拠点としながら、大きなクジラの作品を手がけている作家・ma-rima-ru(マーリマ―ル)さん。彼女曰く「現状と希望を背負ったクジラの形をした生き物」だというその作品は、羊毛とともにECOPET®も使用されているという。

その作品に込められた環境への思いと、なぜECOPET®を使用するに至ったのかについて、鎌倉のアトリエを訪れて話を聞いた。


さまざまな色が混じり合った、独特の色合いが魅力のma-rima-ruさんのクジラの作品ですが、その素材が羊の毛とECOPET®というのは、ちょっと不思議な感じもしますね。なぜ、羊毛とECOPET®を素材に選んだのでしょうか?

クジラというモチーフを作り続けているのは、子供の頃から好きだったという単純な理由からです。水族館や絵本、写真で見るクジラの姿に憧れて、その生態や種類を調べているうちに会いたい、触ってみたい、コミュニケーションをとってみたいと思うようになると同時に、作品として作りたいという気持ちが生まれました。

その素材に羊毛を選んだのは、触っていて安心できるという理由から。それと同時に、羊という生き物は、毛や肉はもちろん、脂や骨まで余すことなく活用することができる、人類と非常に密接な関係を持つ存在であるからです。また、ウールは撥水・保温・保湿・透湿など、高い機能性を持つ繊維であり、しなやかでありながら刺し固めると羊毛フェルトのように強度を持つこともできる、素晴らしい繊維。
さまざまな色の羊毛を使うことで、絵の具を混ぜるのとは違うグラデーションを表現することもできるというのも魅力ですね。最初に羊毛で作ったクジラは、できるだけ実物に似せて作ろうとしていたのですが、自然と環境破壊という相反するものを同居させながら作っていくうち、グラデーションを生かした今の作風へと変化していきました。

なぜ中材にECOPET®を使っているのでしょうか?

制作当初は、詰め物となる内側の素材にはお皿などを包むようなポリエステルの梱包資材を使っていたのですが、現在も作り続けている大きなクジラを作る過程のなかで、中材にはリサイクルしたものを使いたいと思うようになりました。

中材に適した素材を探す中で、長年リサイクルに取り組みながら高い技術を持つと同時に、リサイクルの過程や基準などもしっかりと開示していた帝人フロンティアさんのECOPET®に興味を持つようになって。個人が取引する相手ではないと知りながら、自分の作品に関する事やエコペットに対する思いを長文にしたためて、メールでコンタクトを取らせていただいたんです。

中材にECOPET®を使って作ったのが、このさまざまな色のネップが特徴的なクジラですね。

外側は染色した羊毛を、中材にはエコペットを使用しているのが、このクジラです。海外のカラーダイだと羊毛も鮮やかに染まる半面、環境負荷がかかることもあるので、天然染料を使って自分で染めています。生物多様性にあふれた海そのものをイメージして、さまざまな海の生き物をグラデーションやネップの形で表現しつつ、海が汚染されているという現実も表現するため、あえて重油のような色も使っています。

このクジラは、私にとって「クジラの形をした、現状と希望を背負った生き物」であるとともに、現在の海洋や地球のイメージでもあります。その姿が今後どのようになってゆくかを見てくださる方に想像してもらえるように、あえて未完の状態で終わらせているんです。

現在、中材だけではなく表面にもECOPET®を使うことも考えているのだとか。

このクジラの中材として使っている短繊維のECOPET®は羊毛のように絡ませることはできないのですが、先日サンプルとして少し長い繊維のECOPET®を頂いて。それを使えば、外側まで羊毛フェルトの手法で作ることができそうなので、今後は羊毛とミックスしたりしながら使うのもいいかもしれないなと考えています。

さらにECOPET®は天然染料でも染色することができるのもいいですね。帝人フロンティアさんは長い期間にわたって再生繊維の研究を続けている繊維メーカーなので、ECOPET®の中にもさまざまなバリエーションがあり、非常に制作の可能性を感じています。こちらがさまざまな質問を投げかけても、いい点も悪い点も含めてきちんと説明してくださったので、信頼することができました。

この2つのクジラの造形は、ザトウクジラを模したものですか?

そうですね。その他シロナガスクジラやマッコウクジラも作っているのですが、ザトウクジラが一番好きかもしれません。ザトウクジラは人懐っこくて、感覚毛を備えたコブを多く持っているのが特徴。成体で13メートルほどの大きな体なのに、主食はオキアミという非常に小さなエビなんです。それを食べるために多量の海水を口に含んだのち、ひげ板で濾過したり潮を吹いたりして海水を排出するという、濾過摂食を行なっています。その飲み込んだ水にプラスチックが混ざっていると、排出できないまま胃の中に溜まっていってしまう。そうなってしまうと、お腹も空かなくなり衰弱してしまうんです。

現在世界的に問題になっている、海洋のプラスチックごみが原因となっているのですね。

3年前に由比ヶ浜に上がったシロナガスクジラのお腹からも、プラスチックゴミが見つかっていました。体長10メートルほどでしたが、まだ生後3ヶ月ほどの赤ちゃん。残念なことに、打ち上げられた時には既に死んでしまったようです。

それほどに海がプラスチックで汚染されてしまっている。

私は鎌倉で生まれて育ったのですが、観光客が海を汚していくのを子供の頃から目にしていました。それが嫌で、地元の海に行きたくない頃もあったんです。

クジラが好きで調べていくうち、環境のことまで考えながら制作を行うようになったものの、かといってプラスチックに頼った生活をいますぐ世界中で止めることはできないし、自然素材を作るのにもさまざまな犠牲を払う必要がある。何もしないのが一番いいかもしれないし、ベストな正解はない。

でも、針一本で刺していく作業に想いを載せて、メッセージを発信していくことはできる。

ペットボトルなどの海洋プラスチックで苦しんでいるクジラという生き物を、ペットボトルを資源化したECOPET®を使って作ることで、見てくださる方自身が地球の環境について考えてもらえたら。そんなことを考えながら、現在も葛藤しつつ制作を続けています。