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Interview

廃業寸前だった今治のタオル工場が、「エコペット」をパイルに使用したタオルを開発するまで。

「タオルの町」として知られる愛媛県今治市で、2015年廃業寸前だったタオル工場を引き継いで、今や伊勢丹新宿店や日本橋三越本店に商品を並べるまでに成長させた丹後博文氏。

丹後氏はブランディングやPRを行って会社を成長させるだけでなく、将来を見据えてテイジンのリサイクルポリエステル「エコペット」を使用した商品を開発。しかもタオルの命とも言えるパイル部分に採用したという。 株式会社丹後の誕生から現在に至るまでと、同社のSDGsに対する取り組みについて、代表取締役・丹後博文氏に話を聞いた。


-今治のタオル工場を引き継いだ理由を教えてください。

今でこそ今治タオルは全国的に知られるものとなりましたが、2000年から2010年までの10年間で、約100社ものタオル会社がなくなっているんです。2006年に佐藤可士和さんが今治タオルのブランディングを手掛けて以降認知度が上がってきて、今治もそれなりに潤ってはきたんですが、今度は後継者不足で50社ほどの会社が廃業してしまっている。私はこの町で生まれて以降、ずっとそんな現実を目の当たりにしながら育ってきたんです。そんな中、廃業されようとしている会社からご相談をいただいて、直感的に「この会社を自分でやりたい」と思ったんです。「タオルを通じて幸せを増やしながら、この今治の地場産業を守りたい」「この人達となら、一緒にやっていける」と。

-とはいえ、タオルに関しては全くの素人だったんですよね。

素人だから無茶ができたんだと思います。事業継承した当初この工場で作っていたのは、OEMのタオル。取引先がない中でのスタートだったので、商品開発を始めました。職人さんたちの力を借りながら、通常の織り速度では切れてしまいそうな柔らかい糸を試してみたり、低いテンションで織ることでふんわりとさせることができないかテストを繰り返したり。素材も通常の綿からポリエステル、バンブーレーヨンまで、さまざまなものを試しました。当時は僕も必死だったので、工場長や従業員にも本当に苦労をかけてしまったと思います。

試行錯誤の末、オーガニックコットンを使った、本当に良いと思えるタオルが完成しました。これは自信をもって売れる、と思ったんですが、全然売れなくて。そもそも手にとって貰う機会さえほとんどない。そのときに「いいものを作るだけではなく、PRして製品の良さを知ってもらえなければ意味がないんだな」ということを痛感しましたね。

-今治にはタオルの認証制度があって、認証されると「今治タオル」として人々の目に触れやすくなると思うのですが、その認証は受けていなかったのでしょうか?

当時は事業を引き継いだ関係もあって、認証を受けていなかったんです。でも、90年続く工場で職人さんたちの技術が高かったこともあり、トライ&エラーを重ねながら挑戦していくことができました。また、作ったものを世の中に知ってもらうためには自社ブランドを作る必要があると考え、今治で作った「しあわせを織りなす」という意味を込めて「OLSIA」というブランドを立ち上げたんです。さらに今では上質な綿の良さを引き出した「TANGONO」や、使い心地を追求した「hibino」などのブランドも展開しています。

そんな努力の甲斐もあって、少しずつ会社もブランドも認知されてきて。今では従業員も5倍になりまして、伊勢丹新宿店や日本橋三越本店などにも商品を納めるようになりました。

-さらに「エコペット」を使ったタオルも開発されていますが、どのような理由で採用されたのでしょうか?

使用済みのペットボトルが、みんなに幸せを届けるタオルとして生まれ変わる、というストーリーがいいな、と思ったんです。その上で触ってみると、風合いも良いな、と思って。

-そもそも通常ポリエステルは使わないパイル部分の65%以上に「エコペット」が使われているというのは驚きました。

「このタオルにはリサイクルポリエステルを使用しています」と謳いたいだけであれば、吸水性にあまり影響しない横糸に使うということもできるんです。でも、タオルに使うのであれば直球勝負でパイルに使いたかったんですよね。

うわべだけではなく真剣にSDGsに取り組むことは、タオルのマーケットを広げるだけでなく、みんなの幸せを増やすことにもつながっていくはず、と信じています。

-実際に製品化するにあたっては、さまざまな苦労があったことと思います。

そもそもポリエステルでパイルを織ること自体難しいんです。タオルを作るときには、「延べ」という糸を巻く過程と、「織り」という実際に織ってゆく過程があります。職人さんの感覚やこれまでのデータをもとにしながら、糸のテンションや織り込む角度、織り密度などを調整していきました。その結果、自分たちでも満足のいく「エコペット」のタオルを作ることができました。

-この「エコペット」を使ったタオルは、吸水性や摩擦に対する強さなど、厳しい評価基準で知られる「今治タオル」の認定を受けているんですよね。

「エコペット」はもちろん、そもそもポリエステルのタオルで「今治タオル」の認定を受けられたことは驚くべきことでした。単純に「このタオルにはペットボトルをリサイクルした繊維を使っています」と言ってもさほど反応はないのですが、「パイル部分に使っているんです」と伝えると、「そうなんですか!」と非常に驚かれることも多いですね。

現在は主に企業の名前を入れた販促グッズとして販売しているのですが、既に50社を超える注文を受けております。業界問わず、知名度のある感度の高い会社さんが多いと感じています。

-エコペットに求めることはありますか?

「エコペット」は環境に優しいだけでなく、品質もしっかりしているので採用させていただいています。使い続けることで、「エコペット」はもちろん、タオル業界の可能性も広がっていくと思いますしね。

-今後「エコペット」をこんなものに使いたいな、ということなどあれば教えてください。

現在デザイナーさんと組んで、なにか新しい分野に進出したいなと考えているところです。例えば生活雑貨だったり。今後展開予定のそのような新しい事業でも、「エコペット」を使うことができたら嬉しいですね。

-そのほかのSDGsに対する取り組みを教えてください。

フェアトレードの取り組みを行っています。例えば、アフリカでは綿栽培の現場で子どもや女性が長時間労働を強いられているということもまだまだ多いのですが、フェアトレード協会を通じて、適正な労働で作られたコットンを仕入れるようにしています。

今治のタオル業界においても、全てを自社で賄っているわけではないので、協力会社さんの協力も必要です。地元の雇用機会を増やすという意味でも、価格の安さだけを追い求めるのではなく、価値を増やしたいと考えています。

また、化学肥料や農薬に頼らずに栽培されたオーガニックコットンを積極的に使ったり、これまでは廃棄することも多かった残糸を使ったタオルを作るなども行っています。

ストーリーのある素材で作られた「しあわせを織りなす」タオルを届けることで、みんなの意識も少しずつ変えることができるはず。本当にそう思いますね。