Interview

ファッション×SDGsの教育現場、大阪モード学園講師も驚いた「『エコペット』の品質と種類の豊富さ」

ファッション・デザイン・メイク・美容業界までプロを育成する専門学校、大阪モード学園。

同学園では、学生たちが実社会に触れる機会を設けるとともに、産業界が求める人材を育成することを目的に、さまざまな企業や官公庁と協力しながら産学連携に取り組んでいる。

今年で7年目を迎えた帝人フロンティアとの取り組みにおいて、今年度は同社のリサイクルポリエステル「エコペット」の使用をテーマとして、学生たちがワークウェアとエコバックを制作したという。

今回の取り組みの成果や、学生たちのSDGsに関する意識の変化などについて、大阪モード学園の管理部主事で、今回のプロジェクトの責任者でもある、玉田氏に話を聞いた。


– 産学連携のカリキュラムである、本プロジェクトの目的とその内容について教えてください。

大阪モード学園では、学生たちが実社会に出た際にもその力を十分に発揮することができるよう、企業や官公庁との産学連携を行っています。

実は7年前からテイジンさんとの産学連携に取り組んでおり、今年は「エコペット」を使用するということをテーマに学生たちがワークウェアとエコバッグの制作を行い、テイジンの方に講評を頂くというプロジェクトを実施しました。

– 産学連携には、どのようなメリットがあるとお考えですか?

通常の授業では、「シャツ」「ジャケット」などのテーマを学校側で設定した上で、各学生は自由にデザインして制作を行っていくことが多いのですが、実社会においてデザインを行う際には、さまざまな制限がある中で消費者やクライアントの求める商品を作り上げる必要があります。

この産学連携の最大のメリットは、企業の方から時に厳しい意見をもらいながら、「社会においては、自身の感性だけで自由に商品を作ることはできない」ということを学生自身で学びとることができる、ということだと思います。

それに加えて、テイジンさんとの取り組みでは「エコペット」や「ソロテックス」などの先進的な素材を扱うことができるという点においても、学生にとって貴重な経験となっているのではないかと思います。

– なぜ、「エコペット」をテーマとして設定したのでしょうか?

現在は、デザインや品質、価格だけではお客様の心を動かすことが難しい時代であり、そこに何らかの付加価値をプラスすることが求められていると思います。

そんな中、SDGs=持続可能な社会への意識の高い消費者も増えてきており、「エコペット」のような環境配慮素材を扱うことに意義があると考えたからです。

– 「エコペット」を使ってみて、学生たちや講師たちの感想にはどのようなものがありましたか?

課題の素材としてリサイクル繊維を使用したのは「エコペット」が初めてだったのですが、「ペットボトルをリサイクルした繊維とは思えない」「肌触りも素材感も、従来の生地と変わらない」と、その品質の高さに驚いていました。また、一口に「エコペット」と言っても、様々な質感、機能を持ち合わせたものがあることにも驚いていましたね。

僕自身の意見としては、現在は「環境配慮素材で作られている」ということが販促のキーワードとして使われている面もあると思いますが、今後はそれが当たり前のこととなって、「かっこいいと思って買った商品がたまたま環境配慮素材だった」というような時代になると良いと思いますね。

– 具体的にはどのような「エコペット」を使って制作を行ったのでしょうか?

テイジンさんが30種類ほどの「エコペット」を用意してくださったので、学生たちはその中から自由に選んで制作を行いました。

デニム調のものや吸水速乾性の高いトリコットメッシュのもの、薄手でシワになりにくいもの、「エコペット」と「ソロテックス」を組み合わせたストレッチ性能の高いものなど、さまざまな風合いの「エコペット」がありましたね。

– このプロジェクトに参加した学生や教職員から「こういうところが良かった」というような意見などはありましたか?

完成するまでにも何度かテイジンの方からチェックを頂いていたのですが、学生たちはそれをクリアするために真剣に頑張っていたようです。

普段から学生と接している講師たちは、それぞれの学生の得手不得手を把握しています。また、個々の事情などを知っていることもあり、ある程度以上のことは無意識的に言わないようになってしまっていると思うのですが、企業の方々はそれと関係なく、率直な意見を聞かせてくれたのが非常に良かったと思いますね。

それとともに、講師から指摘されるのと、実際にアパレル業界に携わっている方々から指摘されるのとでは本人たちの意識も違ってくるということもあったように思います。

また、社会においては、ものづくりの能力だけでなく、プレゼンテーションの能力が重要となる場面もあるということを学ぶこともできたのではないかと思います。

– 近年、ファッション業界においてもサステナブルな対応が求められていますが、教育現場ではどのようなことを教えているのでしょうか。

アパレル業界には大量生産、大量廃棄の問題があり、ここ数年、それらを是正する方向へと向かっている、というような講義を行っています。もちろん、大量生産の背景にある価格競争等についても説明するのですが、学生たちは「なぜ捨てていたのですか」と率直に驚くとともに、その問題点や解決法について各自考えているようです。

そのほか、アパレル会社の在庫を使って学生がリメイクしたりオリジナルのスタイリングを組んだりして、それを販売するなどの試みなども行っています。

– 以前に比べて、学生たちのサステナブルへの意識は高くなってきていると思いますか?

景気の問題も関係していると思うのですが、以前のファッション好きの学生たちの中には、最新のトレンドに乗ってブランド物を購入し、流行が去ったら着なくなる、というような人たちも多くいたように思います。

それに対して現在の学生は、新品のブランドものよりも古着への興味の方が高く、スタイリングで新鮮なコーディネートに見せたり、リメイクして新しい価値を付与したりしている子達も多いですね。そのクリエイティビティには本当に驚かされます。

– 今回のプロジェクトを終えた感想を頂ければと思います。

今年度に限らず毎回そうなのですが、学生たちの制作物に対して厳しいご意見を頂戴することができ、非常にありがたく思っています。というのも、毎年このプロジェクト終了後には、学生たちの考え方に大きな変化があるからです。

企業としてお客様を相手にされている方々の意見を聞くことができるこの貴重な機会は、これから社会に出ていく学生たちにとって大きな糧となると思っています。

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