Interview

世界を代表するミシン糸メーカー、Coatsの環境戦略と「エコペット」に期待することとは。

世界3大ミシン糸メーカーのひとつと言われ、英国を拠点に世界50カ国でビジネスを展開、光ファイバーやカーボン製品など新しい分野にも挑戦し続けているCoats社。

SDGsにも積極的に取り組んでいる同社は、2020年より帝人フロンティアのリサイクルポリエステル「エコペット」を採用し、石油由来ポリエステルからの置き換えを進めている。同社の環境戦略と「エコペット」を採用した理由、そして今後の展望について、プロダクトディレクターを務めるSonya Manolova氏に話を聞いた。


- Coatsが取り組んでいる、環境戦略について教えてください。

Coatsは、自社および取引先のパートナー、そして消費者が直面している環境問題について、客観的な評価を行いながら持続可能な社会を作るために何を行うべきかを考えています。さらに、2年毎にこの評価を更新しながら、戦略の調整を行っています。現在、我々は世界が直面している環境問題を克服するために5つの柱を設定しています。その柱とは、「水」「エネルギー」「廃水」「社会」「素材」です。それぞれの柱に対して、少なくとも1つの公開目標を設定した上で、社内で複数のプログラムを進行させています。

また、Coatsは国連グローバル・コンパクトに参加しており、我々のビジネスに大きく関連している7つのサステナブルな発展目標を実現させるために努力を続けています。我々は温室効果ガスの排出量を徐々に削減させながら、2050年までに「ネットゼロ」を達成するために取り組んでいます。我々が使用している原料に起因する温室効果ガスの排出を減らすことは、2030年までの短期目標と、「ネットゼロ」という長期目標の双方を成し遂げるために重要であると考えています。

- いつからCoatsは環境問題について注意を払い始めたのでしょうか。また、そのきっかけなどはありましたか。

常に我々のビジネスに関連する環境問題に注意を払い続けてきました。長年の間、地域の排水基準よりも厳しいグローバルな排水基準に適用してきたと同時に、希少資源の使用を軽減させることにも取り組み続けています。これは持続可能な世界を実現するだけでなく、ビジネスそのものとしても優れていると考えてのことです。

気候変動の問題やサステナブルな原料を使用するという取り組みを始めたのは、ここ5、6年のことです。気候危機の深刻化が明らかになり、また、石油由来の素材に依存した繊維産業では今後の持続的成長が見込めなくなったことがきっかけでした。

- テーマ毎に環境戦略の目標を定められていますが、2022年までの目標に対して、現状どの程度達成できているのでしょうか。

2022年に向けてのCoatsのサステナビリティ戦略は非常に挑戦的なものであったことに加えて、2020年のパンデミックの影響により、予定していた多くの計画を1年延期させることとなってしまいました。それでも、2021年にサステナブルに向けての取り組みを増やすことで挽回を果たし、高い責任感のもと、2022年末の目標達成に向けて努力しています。「エネルギー原単位の削減」と「働きがいのある会社の認定」という2つの目標にいたっては、2022年の目標を1年早く遂行することができました。「用水原単位の削減」に関しては、廃水コンプライアンスや浪費の削減など、2022年に行うべき課題がまだ多く残されていますが、我々はその課題を解決することができると確信しています。2024年までの目標である「リサイクルポリエステルへの置き換え」については、2021年末には19%の製品を完全にリサイクル素材に置き換えており、現在さらにその割合を増やそうとしています。

- 帝人フロティアの「エコペット」をいつから採用していますか。また、なぜ採用し始めたのでしょうか。

2020年の第一タームから採用しています。帝人フロンティアはポリエステルのサプライヤーとしてCoatsの長年のパートナーであり、Coatsがポリエステルのリサイクル化に向けて動き出すと同時に、帝人フロンティアにリサイクルポリエステルのフィラメント糸の開発を依頼しました。

- 「エコペット」の魅了はどのような点だと思いますか。

「エコペット」の高い品質と優れたパフォーマンス、そして安定した調達に、我々は満足しています。

- 従業員やお客様からの「エコペット」に対する要望や評価などはありますか。

帝人フロンティアの「エコペット」フィラメント糸はCoatsの品質基準に適合しているため、我々は今後も「エコペット」を使用してサステナビリティ戦略に沿った更なる糸種や番手の開発を続けていきます。Coatsのすべてのお客様はリサイクル素材への転換に尽力しているため、我々も製品の質に妥協することなく、お客様と共にサステナブルな社会の実現に向けて進むことが重要だと考えています。

- 今後、どのようなことを「エコペット」に期待していますか。

我々Coatsは、帝人フロンティアがイノベーションを続け、新しいリサイクル技術を世の中に広めることを期待しています。我々は、リサイクルが次の段階へと進む突破口は、繊維ごみを新しい繊維へと変えるケミカルリサイクルであると考えています。その技術が進むことで、繊維産業は循環型モデルへと変化することができると思います。そのためにも、Coatsは2030年までに新たな石油由来素材の使用を一切廃止します。

インタビュイー:Sonya Manolova

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